緩和ケアが大切にする考え方

2年前に、私の親戚が「緩和ケアを受けてた」って聞いたんだけど、緩和ケアって何なのかイメージがよく分からないの。

分からなくても無理はないよ。緩和ケア医として診療している私でも、「一般の人からしたら分かりにくだろうな〜」って思うから。
緩和ケアは、一般の多くの人にとって馴染みがなく、よく分からないものだと思います。「初めて聞いた」という人もいると思います。身近に緩和ケアを受けていた人がいたとしても、わかりやすいものではないと思いますし、医療者であっても緩和ケアに関わりがなければ誤った認識を持っている人はたくさんいます。
緩和ケアとは
一言で言うとしたら、緩和ケアは
からだや気持ちの辛さを和らげ、
病気だけではなくその人全体をみて、
その人や家族を支えていく
ことを大切にしている「考え方」だと捉えてください。
緩和ケアは「身体的・精神的な苦痛を和らげるためのケア」と表現されることもありますが、この表現では緩和ケアの全体像を十分に伝えきれていません。苦痛を和らげることは、緩和ケアが重要視していることの一つに過ぎないからです。
そもそも緩和ケアは、病気が治る見込みが少なくなった人に対して「病気だけみていてもダメでしょ!」ということが出発点になっています。病気にしかフォーカスが当たっていなかった、当時の医療に対するアンチテーゼだったんですね。
「全人的に」という言葉は、緩和ケアを理解する上で最も重要なキーワードの一つです。私たちは病気を抱えていても、病気や病人という一面だけを持っているわけではありません。配偶者の前では夫・妻であり、会社の部下の前では上司、友人とは趣味のグループの一員など、多様な顔と人生の歴史を持っています。「全人的にみる」とは、その人がどのような経験を積み重ねてきて、今何を考え、何を大切にしているのか、「一人の人間」として理解しようとする姿勢なのです。
緩和ケアの概念を実践するにあたり、いろいろな職種が協力することは欠かせません。医師、看護師、薬剤師、リハビリテーション専門職(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)、医療ソーシャルワーカー、管理栄養士などの医療者のみならず、一般のボランティアさんやピアサポーターと呼ばれる人たち、さらには神父さん・牧師さんやお坊さんなどの宗教者が、チームの一員として加わることもあります。もちろん、全員がいつも関わっているわけではなく、施設によってはいない職種もあります。チームとして多角的な視点を持つことは、より高い解像度でその人や家族を理解することにつながります。
そして、緩和ケアのこの考え方が特に大事になるのは、治癒があまり期待できず、進行していく可能性が高い病気の方です。その代表例は、進行がんはです。このような病気では、
病気が進む
→ 症状が強くなる
→ 今までのように生活や仕事ができなくなる
→ 気持ちもつらくなってくる、生活にも影響が出てくる、家族もつらくなってくる
というように、いつかはいろいろなところに影響が及んできます。そのため、症状を和らげることに加え、病気以外のところにもしっかり目を向けて対処していかなければならないんです。だからこそいろいろな職種、医療者もそうでない人もいる混合チームを組んで力を合わせる必要があるんです。

そういえば私の親戚も「がんの治療をしていた」って、親から聞いた覚えがあるわ。
「最近目がかすむようになってきたから眼科に行く」とか、「お腹が痛いから消化器内科に行く」とかは誰でもイメージしやすいと思います。身体のどこかと、症状と、診療科がつながっているからですね。そして、眼科に行ったら目を治してくれますし、消化器内科に行ったらお腹を治してくれます。
でも、自分から「緩和ケアを受けたいから緩和ケア科に行く」ということは、ほとんどありません。たいていは、医師や看護師から緩和ケアを勧められて、ということがほとんどです。
このように、緩和ケアは身体の特定の部位と結びつかないことや、概念的な要素も影響し、馴染みのない方にとってわかりにくいのは自然なことだと思います。
まとめ
本日は、緩和ケアの核心となる考え方について解説しました。
からだや気持ちの辛さを和らげ、
病気だけではなくその人全体をみて、
その人や家族を支えていく
この3つの視点を緩和ケアの土台として心に留めていただけたら、今後緩和ケアにまつわるさまざまな情報に触れたとき、きっと理解しやすくなるはずです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
