がんの痛みが心配な人は必見③!知っておきたい医療用麻薬のキホン
こんにちは!緩和ケア医のみちるです!
がんによる痛みは、解熱鎮痛薬を使っても十分に和らがないことが多くあります。その場合は、医療用麻薬の出番になります。

みなさんは、医療用麻薬と聞いて
「ちょっと怖いかも・・・」
と思ったことはありませんか?
医療用麻薬は正しく使えば安全で、痛みで影響を受けていた日常生活を大きく改善させるものです。
この記事では、医療用麻薬に関するよくある疑問や、まず覚えておきたい基本について解説したいと思います。
この記事のまとめはこちらです。
- がんの痛みを和らげる中心選手
- 主な副作用は、眠気、吐き気、便秘
- 眠気と吐き気は次第に消える、便秘は消えないので便通管理が必要
- レスキュー薬をうまく使うことが重要!
- 適切に使用すれば、依存を生じたり寿命が短くなることはまずない
- 使用を続けて効かなくなることは稀
それでは、解説していきます!
医療用麻薬のQ & A

Q. 使ったら麻薬依存になるんじゃないの?
A. がんの痛みに対して適切に使用すれば、依存が生じることは稀です
健常者が医療用麻薬を使用すると脳内のドパミンが増え、幸せな気分になります。それが依存の引き金になると考えられています。しかし、がんによる慢性的な痛みがある時は、医療用麻薬を使用しても脳内のドパミンが増えない状態になっています。そのため、依存になることはないと考えてよいでしょう。
しかし、「がんの痛み」以外に対して「不適切に使用」すると、依存を生じるリスクはあります。以前の記事で、痛みは大きく分けるとがんによる痛みか、がん以外による痛みかに分かれると述べました。緩和ケア医視点では、痛みの原因ががんなのかそれ以外なのかは、医療用麻薬を使用して良いかどうかの大きな分かれ道となります。
Q. 使ったら寿命が短くならないの?
A. 痛みの強さに応じて適切な量を使用すれば、寿命が短くなることはありません
これは、複数の研究で確認されています。
緩和ケアの重要な考え方の一つに、「死期を早めることを遅めることもしない」というものがあります。そもそも意図的に死期を早めることは、緩和ケアの概念に反しています。

ちなみに医療用麻薬は、ほぼ全ての全身麻酔の手術でも痛み止めとして使われているんですよ!
Q. 使ったらだんだん効かなくなるんじゃないの?
A. 全くないわけではありませんが、非常に少ないと言えます
同じ量の医療用麻薬で、何ヶ月間も痛みが落ち着いた状態で過ごす方はたくさんいらっしゃいます。しかし、がんが大きくなることなどによりがんの痛みそのものが強くなっているなら、効果が得られなくなることはあります。
ときどき「これ以上増量できなくなると心配なので」とか、「あまりたくさん飲むと効かなくなると思って」と言い、あまり飲まずに痛みを我慢される方がいらしゃいます。しかしこれは逆効果で、強い痛みを我慢しているとさらに和らげにくい痛みになってしまうんです!
Q. 最後の手段じゃないの?
A. 医療用麻薬は最後の手段ではありませんし、終末期だけに使用するものでもありません
1990年代などに親族や友人をがんで看取った際に「モルヒネを始めたら数日で亡くなった」という経験をされた方は、「医療用麻薬を始める=死期が近い」とか「最後の手段」と捉えることがあります。当時は現在よりも医療用麻薬でがんの痛みを和らげることが普及していませんでした。そのため、痛みに耐えられなくなり、がんの余命が切迫してきている中でようやく医療用麻薬を使い始め、がんの寿命そのもので数日後に息を引き取った、というのが考えられる説の一つです。要は医療用麻薬を使い始めるのが非常に遅かった、ということですね。ただ「モルヒネを始めたら数日で亡くなった」という経験は、医療者に対しても「医療用麻薬を始める=死期が近い」という認識を形作った要因とされています。
また、痛みが強すぎることで、がん治療を継続できなくなることがあります。医療用麻薬で痛みを抑えることは、がん治療を継続する意味でも大切なことなんです。
ここで、めちゃくちゃ大事なことを言います。それは、

痛みの治療は、がん治療の一部です!
がん治療を継続したり、これまでと同じような日常を送るためにも、必要に応じて医療用麻薬を使用し痛みをしっかり和らげましょう。
医療用麻薬でがんの痛みを我慢しない!
医療用麻薬に上限量は決められていない
医療用麻薬を始めたら、処方する医師は適量かどうかを考えています。
痛みが軽くなった
+
副作用で困っていない
適量だと思ったら同じ量で続けます。もし鎮痛がイマイチなら、まずは増やすことが多いでしょう。
となると、こんなことが頭をよぎります。

増やせなくなったら心配だから、痛いけど我慢しようかな・・・
心配はもっともだと思います。解熱鎮痛薬をはじめ多くの薬には、上限量が定められています。しかし、医療用麻薬は上限量が定められていません。痛みが十分和らいでいないなら、量を増やしていくことが可能です。そのため、医療用麻薬はがんの痛みを和らげる中心選手です。
実際に、医療用麻薬を増やせなくなる状況はあるのも事実です。それは、以下のようなときです。
痛みが軽くならない
+
副作用で困っている
先ほど述べた「痛みが軽くなった+副作用で困っていない」とは真逆の状況ですね。つまり、使用によるメリットが得られなくなる一方で、デメリットが大きくなる状況になったならば、それ以上の医療用麻薬の増量は難しくなります。
この場合、次に考えるのは解熱鎮痛薬や医療用麻薬以外の痛み止めや、それ以外の鎮痛方法です。がんの痛みの治療の選び方は、こちらの記事も参考にしてみてください。

レスキュー薬は早めに飲むのがコツ
医療用麻薬には、飲むタイミングで2種類に分けられます。
- 時間を決めて飲むもの(例えば、朝8時と夜8時とか)
- 痛くなった時に飲むもの(=レスキュー薬と言います)
レスキュー薬は、痛くなった時に飲んで痛みを和らげるので、困った時に助けてくれるレスキュー隊のようなイメージですね。そして、このレスキュー薬を自分でうまく使えるかどうかが、痛みをうまく抑えるポイントの一つになります。
レスキュー薬の飲み薬は種類にもよりますが、飲んでから効くまでおおよそ45〜60分ほどかかります。「これから痛くなってくるかも」と感覚でわかるならば、早めにレスキュー薬を飲んだ方が痛みは強くなりにくいです。
火事で例えると、ボヤのうちに消火すればすぐ鎮火できますが、大火事になってから消火し始めても鎮火に時間がかかりますよね。痛みも同じで、強すぎる状態になってから和らげようとしても時間がかかります。レスキュー薬は、痛みが強くなりすぎる前に飲むのが上手な使い方です。
では次に、医療用麻薬の副作用にはどんなものがあるのか解説します。
医療用麻薬の副作用は?
医療用麻薬の副作用は複数ありますが、まず覚えておきたい3つの副作用があります。それは、眠気、吐き気、便秘です。順番に見ていきましょう。
眠気 吐き気 便秘
眠気と吐き気は、体が慣れれば消えていく
眠気と吐き気は、医療用麻薬を開始した時や増量した時に生じやすい症状です。人によっては全く感じない場合もあります。ポイントは、眠気と吐き気は出現したとしても、軽いものなら体が慣れてくればだんだん消えていくことです。期間としては、1週間以内に消えることがほとんどです。
医療用麻薬を初めて処方されるときは、あらかじめ吐き気止めを渡されることも多くあります。吐き気を感じたときは吐き気止めの頓服を飲んで凌ぎ、体が慣れて吐き気が消えていくのを待つのが通常の対応方法です。そのため、医療用麻薬を服用し始め眠気や吐き気が出現したからといっても、軽いものなら医療用麻薬はできれば飲み続けてみてください。
しかし、眠気や吐き気があまりにも強すぎる場合は量が多すぎる可能性があるので、処方された医療機関に早めに連絡しましょう。
便通を調整できるようになろう!
医療用麻薬を飲み始めると、便が固くなり、便通の回数が減ることが普通です。便秘は、眠気や吐き気と異なり、医療用麻薬を飲み続けても体が慣れることがありません。そのため、医療用麻薬の服用を続けている限り、便通を調整していくことは必須になります。
医療用麻薬を初めて処方されるときは、吐き気止めの頓服に加えて便秘治療薬(いわゆる下剤)も処方されることが一般的です。レスキュー薬と同様に、吐き気止めや便秘治療薬も自分でうまく調整できるようになることは大事です。

排便習慣は人それぞれです。自分にとっての”普通の便通”がどういうものなのかも、医療者に伝えましょう!
再診時のポイント
緩和ケア医視点では、医療用麻薬を開始・増量して初めての受診時は、以下のようなことが確認したいポイントになります。
- 痛みが楽になったか?
- 日常生活が楽になったか?
- レスキュー薬を何回くらい使用したか?使った時の効果はあったか?
- 吐き気、眠気は困っていないか?
- 便が固くなっていないか?便の回数は減っていないか?
これらの中で困っていることは伝えましょう。例えば、「痛みが楽になったんだけど便が出づらくなった」とかですね。
痛みが楽になって副作用も困っていないのなら笑顔で診察室に入っていけると思うので、何も言わなくて大丈夫でしょう!
まとめ
今回の記事では、医療用麻薬について知っておきたいポイントを解説しました。
冒頭で示したまとめを、もう一度お見せします。
- がんの痛みを和らげる中心選手
- 主な副作用は、眠気、吐き気、便秘
- 眠気と吐き気は次第に消える、便秘は消えないので便通管理が必要
- レスキュー薬をうまく使うことが重要!
- 適切に使用すれば、依存を生じたり寿命が短くなることはまずない
- 使用を続けて効かなくなることは稀
理解したり覚えたり、することがいろいろあって大変に感じるかもしれません。でも、がん治療はチーム戦です!一人で戦うものではありません。サポートしてくれる医療者は探せばいますので、利用できるものは利用していきましょう。

医療用麻薬を使用せずにがんの痛みに耐えるよりも、使用して今までと同じような生活をしたり、1秒でも長く心穏やかに過ごせる時間を作りませんか?
最後までご覧いただき、ありがとうございました。

