がんの痛みが心配な方は必見①!がんの痛みの治療法
こんにちは!緩和ケア医のみちるです、
普段がん患者さんの診療を行っていると、いま痛みで困っていないけれども「痛みだけは取ってほしい」とか、「将来痛くなってきたら最期は寝かせてほしい」などお願いされることをよく経験します。
それほど、多くの人にとって痛いというのは怖いこと、経験したくないことなのだと思います。

もちろん、私も痛いのは嫌いです!!!
これから数回に分けて、がんの痛みを心配している方が少しでも安心できるよう、痛みについて解説していきます。
今回の記事では、がんの痛みの治療法の全体像についてお伝えします。
がん患者の半分以上は痛みを抱えている
がんについてあまり詳しくない方でも、「がんは痛い」というイメージをお持ちの方は多いのではないでしょうか?
令和5年に内閣府が行った世論調査1)によると、回答者の約90%ががんに対して怖い印象を持っていました。さらに、その人たちに怖いと思う理由を尋ねたところ、約80%が「死に至る場合があるから」と最も多く、次いで約60%が「がんそのものや治療により、痛みなどの症状が出る場合があるから」と回答しています。
1)出典:内閣府世論調査「がん対策に関する世論調査 報告書概略版」(https://survey.gov-online.go.jp/r05/r05-gantaisaku/gairyaku.pdf)
緩和ケア医として診療を行なっていると、ご本人もご家族も半分以上は「最期は痛みなく過ごしたい」「痛みなく過ごさせてあげたい」と希望されているように感じます。そのため、世論調査のこの結果については、実際の診療の感覚とおおむね一致しています。
また、2016年に発表された報告2)では、がん患者全体では51%、進行・転移・終末期のがん患者では66%が痛みを抱えていることがわかりました。
人数としては多くはありませんが、がんの診断からお亡くなりになるまで痛みがほぼ苦痛にならない方に出会うことがあります。そういった方たちはラッキーな部類かなあと思います。
このように、がんの痛みは多くの人が心配しており、実際にがん患者さんの半分以上は痛みを抱えているのですが、過度に恐れる必要はありません。痛みについてしっかり医療者へ伝え、適切に対処すれば多くの場合は和らげることができるからです。
がん患者の痛みは適切に対処すれば多くの場合は和らげられる
緩和ケアの考えでは、痛みを和らげることは最も重視していることの一つです。
がんの人が感じる痛みは、ざっくりと
がんによる痛み or がん以外による痛み
に分けられます。
ここから先は、がんによる痛みについて、お話しします。
痛みの一般的な治療法をイラストにまとめると、このような感じです。

もちろん、個々の患者さんの病気の状態、症状の強さ、医師による違いなど、いろいろな状況により治療の選択は変わるため、標準的な考え方としてご理解ください。
がんによる痛みの治療は、痛み止めの薬が中心
がんによる痛みは、痛み止めの使用を中心に和らげていきます。まずは、ロキソプロフェンやアセトアミノフェンなどの解熱鎮痛薬を使用します。解熱鎮痛薬の一部は、ドラッグストアでも見かけますよね。
余談ですが、薬の名前には2種類あります。一般名と商品名です。一般名は本名のようなもので、世界共通です。ロキソプロフェン、アセトアミノフェンは、どちらも一般名です。
ドラッグストアの薬のパッケージに大きく書かれているのは、商品名(あだ名のイメージ)です。箱の裏の成分表には、小さい文字で〇〇プロフェンとかアセトアミノフェンとか書かれていると思います。
商品名で表記すると特定の製薬会社を推すことになってしまうので、一般の方にはわかりづらくて申し訳ありませんが、薬の名称は一般名で表記しています。
しかし、がんの痛みは解熱鎮痛薬だけでは十分に和らがないことが多くあります。その場合は、医療用麻薬の出番となります。医療用麻薬はがんの痛みを和らげるのに必要不可欠なものです。解熱鎮痛薬と医療用麻薬は、一緒に使うことが普通です。
現在は、日本で使用できる医療用麻薬は種類も増え、飲み薬、貼り薬、注射薬など形もいろいろなものがあります。医療用麻薬をいかにうまく使っていくかは、がんによる痛みを和らげ、それまでに近い生活を維持するカギと言っても過言ではありません。医療用麻薬はそれだけで非常に大きいテーマなので、別の記事で解説したいと思います。
医療用麻薬を増やしても効果が得られにくくなってきた、副作用で増やせなくなってきたという場合には、それ以外の痛み止めを加えてくことも行います。
痛みの原因や程度に応じて、その他の治療も行う
がんが骨に転移した場合などは、放射線治療が効果的なことがあります。これは痛みを和らげる目的の放射線治療で、がんを治す目的の放射線治療ではありません。
注意点としては、すべてのがんの痛みに有効なわけではないことや、同じ箇所に放射線を当てられる量には限度があることなどが挙げられます。また、放射線治療は実施できない医療機関が多くありことにも注意が必要です。
リハビリテーションも、痛みの原因によっては効果的な対応になります。例えば、動くときに痛みが強くなりやすいのなら痛みが出現しにくい動き方を習得したり、必要があれば杖やコルセットなどの適切な装具を使用したりすることです。
リハビリテーションというと、一般には運動機能の回復が目的です。では、がんが進み病気や運動機能の回復が見込めなくなると、リハビリテーションの役割はなくなるのかと言うと、そうではありません。
体力の低下が進み横になる時間が長くなってくると、患者さんは天井や壁を見る時間が増えてきます。短い時間であっても体を起こすことで見える景色も変わり、気分転換につながります。横になっている時と体を起こした時とで患者さんの表情や顔が変わることはよく経験します。
最終的には体を起こすことも難しい体調になりますが、寝たきりになっても関節を優しく動かすことで関節が固まることを防いだり、筋肉の凝りをほぐすことは最期まで楽に過ごすことにつながります。リハビリテーションはがんが進んでも重要な存在です。
神経ブロックも痛みの治療の重要な方法です。特に、これまで述べた方法などで痛みの治療を行っても、なかなか和らがない難しい痛みに対して考えるべき治療になります。専門性の高い治療になり、実施できる医療機関はだいぶ限られてきます。
その他、がん治療中であれば、手術で腫瘍を取ったり、化学療法で腫瘍が小さくなれば痛みが軽くなることはあります。がん治療そのものが、痛みを和らげる治療にもなっているわけですね。
まとめ
がんの痛みは多くの人が心配しており、実際に痛みを抱えることが多いのですが、痛み止めの薬を中心に痛みを和らげる方法はいろいろがあることがわかりました。
そして、より適切な痛みの治療を行うには、皆さんにも協力していただくことがあります。それは、痛みをしっかり伝えることです。

次回の記事では、痛みの伝え方のポイントを解説します!
最後までご覧いただき、ありがとうございました。