末期腎不全も緩和ケア病棟に入院可能に!

末期腎不全が緩和ケア病棟の対象に
316nosukeazarashi

こんにちは!緩和ケア医のみちるです!

先日、令和8年の診療報酬改定が発表されました。緩和ケアに関しては、今回大きなニュースが一つあります。

それは、末期腎不全と診断されていれば、緩和ケア病棟に入ることができるようになったということです!

今回は、このことについて解説したいと思います。

日本の緩和ケアの大きな出来事である

これまで日本では、緩和ケア病棟に入ることができるのは、がんかAIDSの方に限られていました。

正確に言えば、どんな病気でも緩和ケア病棟に入ることはできます。しかし、がんもしくはAIDS以外の患者さんを緩和ケア病棟に入院させても病院は非常に少ない診療報酬しかもらえないため、事実上、緩和ケア病棟に入院できるのは、多くの診療報酬が得られるがんもしくはAIDSの患者さんだけでした。病院経営の都合ということですね。

緩和ケア病棟に入ることができる病気が増えたことは、日本の緩和ケアの歴史において非常に大きな出来事です。

WHOは「生命を脅かす病気」に対して緩和ケアを提供すべき、としています。それにもかかわらず、日本では緩和ケア病棟に入れるのはがんとAIDSのみという、おかしな状況が長らく続いていました。

みちる
みちる

「生命を脅かす病気」は、決してがんとAIDSだけではありませんよね。

がん以外の病気——例えば、心不全、慢性肺疾患など——にも緩和ケアの提供が必要だという認識は、緩和ケアに携わる者の間ではおおむね共通していましたが、診療報酬上のメリットがなかったため、それらの病気の方が緩和ケア病棟に入ることはありませんでした。

末期腎不全に限ってではありますが、がん以外の病気への緩和ケアの提供が診療報酬で支えられるようになった点で、今回の診療報酬改定は日本の緩和ケアにおける大きな転換点の一つと言ってよいでしょう。

今後の予想

ここからは私見になります。

がん以外の病気への緩和ケアは徐々に広がっていく

先ほども述べましたが、日本の緩和ケアはがんに偏りすぎてきました。それが今回の改定でようやく是正の一歩を踏み出しました。

末期腎不全の他、心不全、慢性肺疾患、神経疾患、認知症、小児医療、救急医療など、緩和ケアが関わるべき病気や分野はさまざまあります。

がん以外の病気や分野へ緩和ケアが広がっていく方向性は、ほぼ間違いないありません。

末期腎不全患者の緩和ケア病棟入院はまだ時間がかかる

今回の改定を受け、全国の緩和ケア病棟ですぐに末期腎不全患者がどんどん入ることはないと私は思います。

「意味がないじゃないか!」と思うかもしれませんが、私がそのように予想する理由は大きく2点挙げられます。

  • 緩和ケア病棟の多くの医師や看護師は、末期腎不全患者の診療に慣れていない
  • 医療者にまだ周知されていない

がんと腎不全は全く違う病気です。日本において緩和ケアはがん診療と深く結びついて発展してきたため、がん診療や緩和ケアに携わってきた医療者は、腎不全については疎い場合がしばしば見られます。

緩和ケア病棟への末期腎不全患者の入院が一般的になるには、

  • 緩和ケア病棟スタッフの、末期腎不全に関する知識の習得と経験の蓄積
  • 末期腎不全患者が緩和ケア病棟に入れるようになったことの、患者・家族、医療者への周知の強化
  • 腎臓内科や透析クリニックから緩和ケアへつなぐルートの確立

これらのことが必要です。

現場ではこれらのことを手探りしながら進め、一部の緩和ケア病棟が少しずつ経験を積み、何年もかけて徐々に一般的になるものと思われます。

制度は変わりましたが、現場が追いつくにはまだ時間がかかるでしょう。

かえって緩和ケア病棟に入りにくくなる可能性

利用者視点では、必ずしも手放しに喜べるわけではありません。というのは、緩和ケア病棟に入りづらくなる可能性があるからです。

緩和ケア病棟の病床数は同じなのに対象者が増えるということは、入院を希望する方が増えるわけですよね。

『家での生活が難しくなってきたから、緩和ケア病棟に入りたい』と病院に連絡しても、入院までの日数が今まで以上に長くなるかもしれません。

「それなら緩和ケア病棟を増やせばいいじゃないか!」と思う方もいらっしゃるでしょうが、それは期待できません。国の医療政策の方向性として、人口減少に応じて病床数は削減していきます。

緩和ケア病棟の数はまだ増加傾向ですが、2020年代は2010年代と比べ、その伸びは著しく鈍化しています。今後、2010年代の勢いで再び緩和ケア病棟の数が増えることはまず考えられません。増えるとしたら、在宅緩和ケアです。

緩和ケア病棟でも早期の退院を促すようになって久しいですが、入院を待っている患者数が増えればその傾向に拍車がかかるのは間違いありません。緩和ケア病棟へは、より入りづらく、入ったとしてもより早期の退院を促される可能性があります。

見方を変えれば、がんとAIDSを除き、末期腎不全以外の病気では緩和ケア病棟に入れない状況は変わっていない、とも言えます。

がん以外の病気への緩和ケアは広がっていくのは確実ですが、緩和ケア病棟に入ることのできる病気がどこまで増えるのかは何とも言えません。

緩和ケアと緩和ケア病棟の違いについては、こちらの記事をぜひご覧ください。

あわせて読みたい
緩和ケア病棟の特徴①〜どんなところなの?〜
緩和ケア病棟の特徴①〜どんなところなの?〜

まとめ

今回の診療報酬改定は、緩和ケア病棟に入れる病気が増えた点で非常に大きな出来事です。

課題もさまざまありますが、緩和ケアの裾野が広がったことは私は素直に喜びたいと思います。

緩和ケアは生命を脅かす疾患に対して提供されるものという、WHOの定義にも一歩近づいたと言えます。

  • 末期腎不全でも緩和ケア病棟に入れるように制度が変更された
  • 多くの緩和ケア病棟において末期腎不全患者の受け入れには、しばらく時間がかかると思われる
  • 緩和ケア病棟へはより入りづらく、より退院を促される環境になる可能性がある

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


記事URLをコピーしました