余命の予測ってできるの? 〜がんが進んだ時の体調の変わり方〜
がんの病気が進んでくると、ご本人やご家族からこのように訊かれることがよくあります。

あと、どれくらいですか・・・?
がんと向き合う中で、「あと、どれくらいの時間が残されているのだろう?」と考えるのは自然なことです。知っておくのが怖いという方もいれば、準備のために知っておきたいという方もいらっしゃいます。
本日は、少し勇気の要ることかもしれませんが、「知っておきたい」という方に向けて、がん特有の進み方と余命の考え方を丁寧にお話しします。
がんは悪化し始めたら早い
がんは進んでいくと、体力の変化に特徴が見られます。
イメージ図にすると、このような感じです。

出典:Lunney JR. 2003 一部改変
ヨコ方向は時間経過で、左の方が現在に近く、右の方が未来を指しています。
タテ方向は体力を示していて、上ほど体力がある、下ほど体力がないという意味です。
そして、ポイントはコレです。
- 悪化し始めたら早い!
上のイメージ図を少し解説すると、
- ①の時期 → 体力は横ばいで推移、あるいは緩やかに低下していく
- ②の時期 → ある時を境に体力の低下のペースが早くなり始める
- ③の時期 → 悪化し始めたら、その後は早い
①の時期は、少しずつ食欲が落ちて食事を残すことが増えてきたり、家の外に出かける頻度が減ったりしながらも、何とか自宅で過ごせる時期です。
②の時期になると、次のようなことが起こってきます。
- 家の中で転ぶようになる
- 1ヶ月前までは家の外に散歩に行けたのに、今は布団から起き上がるのも大変、ということも起こる
- 食事が急に食べられなくなる、残す量が増えてくる

こんな急に変わるものなの?

そうなんです。これがこの病気の特徴なんです。
びっくりしますよね。
一人暮らしの方ですと、家の中で転んでしまったら起き上がることができず、次に誰か自宅に来てくれるまで横になったままということも起こります。また、トイレに行くのが遅れて衣類を汚してしまったりと、日々の生活へ影響がはっきりと現れてきます。
ご本人はもちろんのこと、周りのご家族がびっくりされます。「どんどん悪化している」、「急変している」などと感じる方は、大勢いらっしゃいます。戸惑うのも無理はありませんが、これは典型的ながんの進み方になります。
③の時期になりどんどん体調が低下していくと、トイレ以外は横になって過ごすようになり、食事も数口くらいしか食べられなっていきます。そして、最終的には眠る時間が長くなっていき、息を引き取ることになります。
そのため、「がんは悪化し始めたら早い」ことを知っている医療者は、本人がある程度元気なうちから緩和ケアや訪問診療の利用、介護認定調査を勧めたりします。しかし、本人はそれなりに生活ができているので「まだ早いよ」とか「その時が来たら」などと言って乗り気ではないことがよくあります。そして、いざ体調が低下し始めてからバタバタと手続きを進める、あるいは体調の低下の方が早ければ手続きの方が間に合わない、ということが往々にして起こります。
悪化し始めたら一気に進んでいくがんは、寝たきりの状態で長く過ごすこともある老衰とは進み方が全く異なるんです。
がんのこの特徴は、余命の予測をするにあたり重要な点になります。

では次に、余命の予測について解説しますね!
がんの余命の予測
現在、がんが進んだ時の医療者が余命の予測に用いる指標は主に2つ(※医療者向け注釈:PPIとPaP score)あります。
これらの指標をもとに、一般の方が覚えておきたいポイントは以下になります。
- 横になっている時間が長くなってきた
- 食欲が落ちてきた
- 息苦しさが強くなってきた
- むくんできた
- 頭がしっかりしなくなってきた
ざっくりとした理解としては、これらの中で当てはまるものが多いほど、余命が差し迫ってきていると、考えてください。
よく、「痛みが強くなってきたから、そろそろ(寿命)だと思う」と仰る方に出会います。しかし、実は痛みの強さと寿命は関係がないんです。感覚的にはなかなか理解しにくいと思います。痛みを和らげて穏やかに過ごす時間を増やすためにも、痛みの治療は重要です。
がんは悪化し始めると一方通行で進んでいくことが多いため、他の病気と比べたら余命の予測は行いやすい方だと思います。

余命にまつわる話として、次のことは頭に入れておいても良いかもしれません。
医師は余命を長めに見積もってしまいがち

え、そうなんですか??

これも驚くかもしれませんが、そうなんですよ。複数の研究がされていて、確からしいことなんです。
研究結果の解釈はいくつかありますが、がんが進むと急変で息を引き取ってしまう方が一定数いらっしゃることは、要因の一つと考えられています。
覚えておきたいポイントは、次のことです。
- ある程度の「幅」があるものと考える
- 予測より短くなることも、長くなることもある
- 頭の片隅には「医師の予測よりも短いことがあるかも」、と置いておく
医師から「余命あと○か月です」などと言われた場合、その期間に囚われてしまう方がいらっしゃいます。しかし、医師から提示される数字は、あくまで「目安」に過ぎません。余命の予測は「幅」があるものと考えましょう。
次の言葉を覚えておいても良いかもしれません。
”最悪に備え、最善を期待する”
最悪(=思っていたよりも早いお別れになってしまう)に備え、最善(=思っていたよりも長く生きてくれる)を期待する、ということです。これは緩和ケアに限らず、物事全般に言えることかもしれません。心のゆとりを持つためにも、良いシナリオも悪いシナリオも想定しておきたいですね。
まとめ
本日は、がんの進み方と余命の予測について解説しました。
ポイントをおさらいしましょう。
- がんは悪化し始めたら早い!

イメージ図とセットで覚えておきましょう!
- 横になっている時間が長くなってきた
- 食欲が落ちてきた
- 息苦しさが強くなってきた
- むくんできた
- 頭がしっかりしなくなってきた
- ある程度の「幅」があるものと考える
- 予測より短くなることも、長くなることもある
- 頭の片隅には「医師の予測よりも短いことがあるかも」、と置いておく
読むのが少し大変だったかもしれませんが、参考になれば幸いです。
ここまでご覧いただき、ありがとうございました。