緩和ケア病棟ってどんなところ?

緩和ケア病棟ってどんなところ?徹底解説
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こんにちは!緩和ケア医のみちるです!

がん治療の選択肢が少なくなってくると、主治医などから緩和ケア病棟を勧められることがあります。しかし、緩和ケア病棟は多くの病棟と違う点がいろいろあるので、わかりづらいと思います。

本日は緩和ケア病棟のイメージを持ってもらえるよう、緩和ケア病棟がどんなところなのか解説します!

個々の緩和ケア病棟により細かな点は異なることもありますが、一般的な緩和ケア病棟はこんなところ、という風に思ってもらえればと思います。

緩和ケア病棟のコンセプト

緩和ケア病棟(ホスピス)のコンセプトは、

病気の根治が目指せない、余命もあまり長くない

それならば、つらい症状を和らげて

ご本人とご家族が過ごしやすい環境で過ごしてもらおう!

と思ってください。

このイメージを持って頂けると、これから述べる緩和ケア病棟の特徴を理解しやすくなると思います。

みちる
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ちなみに、”緩和ケア病棟”と”ホスピス”は、同じものを指していると思ってもらって構いません。

「緩和ケア病棟に入らないと緩和ケアを受けられない」と思っている方がいらっしゃいますが、これは正確な理解ではありません。病院により差がある部分ではありますが、外来通院、在宅療養、緩和ケア病棟以外の病棟でも緩和ケアを受けることは可能です。

緩和ケアは「考え方」なので、緩和ケアのマインドや技術を持った医療者にみてもらっているのなら、それは緩和ケアを受けていることに他なりません緩和ケア病棟はそのような医療者が集まっている病棟と考えてください。

では次に、緩和ケア病棟の具体的な特徴について説明していきます。

入院できるのは、主にがん

緩和ケア病棟に入院できる病気は、がん、もしくはAIDSです。どんな病気でも入院できるわけではありません。

正確に言えば入院そのものはできるのですが、がんもしくはAIDSの診断がない場合、入院させても緩和ケア病棟の収益にならないため、入院させればさせるだけ病院が赤字になります。病院経営の都合により、がんもしくはAIDS以外の患者さんは、事実上緩和ケア病棟に入院できないのです。これは、日本の緩和ケアのおかしな点の一つでもあります。

みちる
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実際には緩和ケア病棟の患者さんは、AIDSよりもがんの方が圧倒的に多いため「緩和ケア病棟に入るには、がんの診断が必要」と思ってもらっても差し支えないでしょう。

がんの治療は行わない

緩和ケア病棟では、がんの治療は行いません。その裏返しにもなりますが、がん治療を行っている間は、通常緩和ケア病棟には入れません

緩和ケア病棟には、入棟基準と退棟基準が設けられています。入棟基準とは緩和ケア病棟に入るための条件で、ご本人ががんの治療を希望されないことが条件の一つになっていることがほとんどです。

緩和ケア病棟では全ての病気に対して治療を行わないと思われがちですが、それは正確な理解ではありません。がん以外の病気には治療を行いますが、がんの進行により体調が悪化していく中で、がん以外の病気に対してどこまで検査・診断・治療を行うのかはケースバイケースになります。検査・診断・治療を行ってもがんによる寿命を先に迎える可能性が高い場合は、治療しないこともあります。

例えば、余命2〜3週以下の可能性が高い状態の時に、転倒して足を骨折したとしましょう。整形外科で手術を行ったとしても、骨折が治る前にがんにより寿命を迎える可能性が非常に高いと考えられます。この場合は、手術は行わず、鎮痛をしっかり行いながら残りの時間を過ごしていただくということはあります。

がんは一方通行で悪化することが多いので、先の見通しをつけやすい点はあります。余命の予測は方針を決める際に非常に重要な要素になります。余命の予測については、こちらの記事もご覧ください。

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症状を和らげる治療はしっかり行う

がんの治療は行わない一方、症状を和らげる治療は十分行います。がんが進むと、痛み、不眠、からだのだるさなど、症状がいろいろ現れてきます。苦痛症状をしっかり和らげることは、緩和ケア病棟で行う最も重要なことの一つです。

苦痛症状を和らげることは、一定のスキルが必要です。緩和ケア病棟の医師や看護師などのスタッフは、総じて苦痛を和らげるスキルを有しています。

「痛みだけは取ってほしい」と、痛みを心配しているがん患者さんは大勢いらっしゃいます。がんの痛みや医療用麻薬については、こちらの記事もぜひご覧ください。

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“今までの生活”に近づける

緩和ケア病棟に入院する患者さんは、遠くないうちにがんの進行により息を引き取る、ということが前提としてあります。そのため、病気の治療よりも快適な生活や療養を送れることに重きが置かれています。

具体的には、

  • からだの清潔は多くの病棟よりもこまめに綺麗にしてくれるところが多い
  • 季節のイベントがあったり、ボランティアスタッフも関わってくれる
  • モニター心電図はつけないことが多い
  • 検査の回数は少なくなる
  • 心臓や呼吸が止まっても、心臓マッサージなどの蘇生治療は行わない
  • 個室が多い
  • 他病棟よりも静かである

などですが、他にもいろいろあります。

一つずつ解説していきます。

からだの清潔を保つことは、緩和ケア病棟で重視されていることの一つです。一般病棟ではからだの清潔が重視されていないのではなく、看護師の人数が足りないためそこまで手が回らないことが実情です。緩和ケア病棟は多くの一般病棟に比べたら看護師の人数が多いため、それが可能です。緩和ケア病棟に入院になるときは、体力の低下や症状が強いために自宅でシャワーを浴びることもままならないことが多くあります。1か月ぶりのシャワーだった、ということも決して珍しくありません。そのような患者さんが入院されシャワーや風呂に入った後の爽快な表情を見せてくださいます。緩和ケア病棟で働いていると、非常に嬉しく感じる瞬間の一つです。

季節のイベントとは、例えば節分にはスタッフが病室で豆まきしたり(時には鬼に扮することも)、ひな祭りにはひな壇を飾ったりなどです。緩和ケア病棟ではボランティアさんも患者さんに関わってくれるところが多く、ティーサービスや楽器演奏などのイベントを不定期で行ってくれたりします。

モニター心電図の電極シールとかコードは療養生活の妨げになるものという考えで、緩和ケア病棟では装着しないことが普通です。

検査の回数が少なくなるというのは、いくつか理由があります。検査を行なっても全体の方針が変わらない(がんの治療をそもそも行わないため)ことや、検査しても「悪化している」ことの確認で終わることが多くあります。採血やレントゲン検査くらいはときどき行うことはあるにせよ、時間のかかる検査やからだへの負荷が強い検査を行うことはあまりありません。

一番大事なところかもしれませんが、心臓や呼吸が止まっても、心臓マッサージなどの蘇生治療は行いません。がんの進行により心臓や呼吸が止まった場合に蘇生治療を行っても回復する見込みは残念ながらほとんどありません。寿命を伸ばすことも短くすることもしない、というのは緩和ケア病棟の重要な考え方の一つです。

快適な生活や療養という点で、緩和ケア病棟は個室が多く用意されています。

個室か・・・お金がかかりそう・・・

と思うかもしれません。個室の利用料金は、緩和ケア病棟によってさまざまです。無料個室が設定されているところもありますので、利用を考えているなら金額は必ず確認しましょう

これらの特徴だけでも、緩和ケア病棟が通常の病棟とは毛色が違うところだと感じて頂けたのではないでしょうか。

ずっとは入院できない

緩和ケア病棟に入院した場合、体調が安定していたら基本的に退院を勧められます緩和ケア病棟に何か月も入院し続けることはできないと考えてください。

もともと終(つい)の住処としての役割を求められていた日本の緩和ケア病棟は、2010年代以降は在宅療養の環境を整える役割も求められるようになりました。そんな中でも数は多くはありませんが、長期入院も比較的許容する方針の緩和ケア病棟もあります。このあたりは、病院の方針が大きく影響する部分になります。

ときどき「緩和ケア病棟に入ったら退院できない」と思っている方がいらっしゃいますが、それは誤った理解です。現在は自宅と緩和ケア病棟を行ったり来たりしながら過ごす方が大勢いらっしゃいます。家や施設で過ごせそう、過ごしたいのならば、緩和ケア病棟に入院し続ける必要はありません

希望しないなら入らなくて良い

緩和ケア病棟は希望する方が入るところです。

  • 死ぬのを待つだけだから緩和ケア病棟には入りたくない!
  • 自分は最期までがんと闘いたい!

そのような考えで、緩和ケア病棟に入ることを望まない方がいらっしゃいますが、そのような方が緩和ケア病棟に無理に入る必要はありません。

では、緩和ケア病棟に入らなければ緩和ケアを受けられないのかというと、そうではありません。医療機関によっては、一般病棟や在宅でも緩和ケアを受けることは可能です。緩和ケアチームがある病院なら、主治医は今までの診療科が、症状緩和は主に緩和ケアチームが担当するという形で診てもらえます。また、緩和ケアに詳しい在宅医に診てもらえるなら、自宅にいながら緩和ケアを受けることができます。緩和ケア病棟は緩和ケアを受ける場所の一つに過ぎない、と覚えておきましょう。

まとめ

いかがでしたか?緩和ケア病棟のイメージが、少し湧きましたでしょうか。

最後に、もう一度緩和ケア病棟のコンセプトを振り返ります。

病気の根治が目指せない、余命もあまり長くない

それならば、つらい症状を和らげて

ご本人とご家族が過ごしやすい環境で過ごしてもらおう!

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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