【比較解説】緩和ケア病棟と在宅緩和ケアの違い
こんにちは!緩和ケア医のみちるです!
「緩和ケア病棟に入るのと、自宅で緩和ケアを受けるのと、どちらが良いのだろうか?」
本日は、記事の前半では緩和ケア病棟で受ける緩和ケアと在宅緩和ケアのメリット・デメリットについて解説します。
後半では、在宅療養や終末期における心構えも述べていますが、患者さんやご家族にとっては少し厳しい内容が含まれているかもしれません。
しかし、実際に緩和ケア病棟での診療や訪問診療を行っているからこそ伝えられる内容だと思います。
都合の悪い話や厳しい話は聞きたくないという方は、ご覧にならない方が良いかもしれません。
また、私は訪問診療よりも緩和ケア病棟での勤務歴の方が長いのですが、緩和ケア病棟と訪問診療のどちらかを勧めているわけではありません。
そのことを頭に入れた上で、記事をご覧いただけたらと思います。
緩和ケア病棟のメリット・デメリット
- 病院内に医師と看護師がいる安心感
- 家族は介護をする必要がないので楽
- 使用できる薬剤の選択肢は多い(特に注射薬)
- 長期入院ができない
- 人によっては束縛感を感じる
病院に医師と看護師がいる安心感
在宅緩和ケアではなく緩和ケア病棟に入る一番のメリットは、病院内に医師と看護師がいる安心感でしょう。
ご本人よりもご家族の方が、そう感じるかもしれません。
自宅で過ごしていると、多かれ少なかれご家族が介護に協力しなければなりません。
入院すればご家族が介護する手間がなくなるため、ご家族にとっては非常に楽です。
病院では注射薬も使いやすく、苦痛症状を和らげる治療の選択肢は在宅より多くなります。
長期入院ができないという現実
最大のデメリットは、長期入院ができないという点です。
緩和ケア病棟に入っても、病状が安定していたり強い苦痛症状がない場合は、1〜2か月くらいで退院となるところが多いでしょう。
退院先は、自宅退院か、それが難しいなら施設入所です。
しかし、自宅退院のあと、おおむね7日間以上自宅で過ごせば、再び緩和ケア病棟に入院していただくことはできたりします。
患者さんもご家族も、病棟スタッフから退院の話をされてがっかりされる方はたくさんいらっしゃいます。
「ずっと入院できると思っていた」
「緩和ケア病棟に入ったばかりなのに、退院の話をされると思わなかった」
などの声をよく頂きます。
しかし、こればかりは診療報酬の仕組みと病院の方針の問題なので、緩和ケア病棟ではどうしようもないところではあります。
昔は緩和ケア病棟に半年や1年入院している患者さんは比較的みられていましたが、現在は診療報酬の影響で、入院期間が長くなると収益が下がってしまいます。
病院経営の点で、緩和ケア病棟に何か月も入院している患者さんを抱えられないのです。
何か特殊な事情がある場合は何か月も入院できることもありますが、例外と考えてください。
緩和ケア病棟によっては長期入院を比較的許容しているところもありますが、日本の緩和ケア病棟全体から見れば、そのような方針のところは少数派です。
そのような病院は、経営を犠牲にしてケアを提供していることを忘れないでおきましょう。
緩和ケア病棟には1〜2か月入院したら一旦は退院しないといけない、と思っておきましょう。
実際には、自宅退院時に7日〜10日後の再入院を決めた状態で自宅退院して頂くことは、結構あります。
ご家族としては、いつまで続くのかわからない在宅療養は心理的に抵抗感が強くても、7日間〜10日間なら「それならやってみようか」という気持ちになったり、仕事の調整もしやすかったりします。
「余命はまだ何か月も見込まれるけれども、いろいろな事情で長期の在宅療養はできない」という方の場合、「1か月緩和ケア病棟に入院、7日間自宅退院」というサイクルで何か月間も過ごされる方はいらっしゃいます。
在宅緩和ケアのメリット・デメリット
- 慣れ親しんだ環境で生活できる
- 病院のような拘束感や窮屈さがない
- 医師や看護師の臨時訪問は、すぐには来ない可能性がある
- 長期間に及ぶと家族の介護疲労の懸念
いつもの環境で生活できる
在宅療養の最大のメリットは、慣れ親しんだ空間で生活できること、これに尽きます。
自宅では自由にできても、病院ではルールや管理上、制限されることがいくつかあります。
お酒を飲んだり、ペットと一緒に過ごしたりすることは、その最たる例でしょう。
自宅なら好きな時に起きたり寝たりしても、誰からも文句を言われません。
テレビも自宅なら見放題ですが、病院では通常、テレビカードを購入して視聴します。
「テレビカードを使い切ったけれど自分では買いに行けない、次に家族が面会に来るまで数日あるから、それまでテレビが見られない」ということは、よく起こります。
体を動かすことはだんだん大変になっていくので「自宅は自由である」とまで言い切るのは憚られますが、自宅は病院よりもさまざまな制限が少ないのは間違いありません。
緩和ケア病棟が自宅での生活にできるだけ近づけられるよう努めていると言っても、自宅にはなりません。
医療スタッフの到着までの時間は覚悟が必要
在宅療養で大事なのは、臨時訪問の依頼です。
何か困ったことが起きて医師や看護師に来てほしいと依頼しても、すぐに来てもらえるとは限りません。
他の患者さんを訪問している最中に連絡を受けた場合、その訪問を終えてから車で移動し、向かうことになります。
訪問エリアの端から端へ移動することもあります。
ご本人・ご家族ともに連絡から到着までの時間を待つしかなく、在宅療養を行うなら、そのような時間が生じることは覚悟するしかありません。
ご家族の介護疲労はレスパイト入院で乗り切る
在宅療養には、ご家族の理解と、ある程度の協力が必要になります。
在宅療養が長期間に及ぶと、ご家族の介護疲労が蓄積することがあります。
そのような場合には、ご家族の疲労の回復を目的として、ご本人に入院していただくことがあります。
このような入院を、レスパイト入院と言います。
ご本人は困っていないのに、ご本人に入院してもらうわけです。
そのためレスパイト入院を行う際は、ご本人に必要性を理解してもらい、入院の承諾をいただくことが最大のポイントになります。
緩和ケア病棟はレスパイト入院を受けることも役割の一つなので、在宅療養で心身に疲労が蓄積していると感じているご家族は、在宅医療のスタッフや病院に相談しましょう。
一つ注意点としては、レスパイト入院はずっとは行えないということです。
入院時に、だいたい1〜2週間くらいの予定で入院し、期日を迎えたら自宅退院となります。
レスパイト入院の期間は1〜2週間程度、と思っておきましょう。
在宅療養のポイント
- ご本人の「自宅で過ごしたい」気持ちが強い
- 始めてみたら「意外と大丈夫だ」と思える
- 家族の理解と協力が得られるならベター
- 本人・家族ともにある種の「覚悟」「割り切る気持ち」を持つ
- 「100点」を目指さない姿勢
在宅療養に向いている人
緩和ケア病棟に何か月も入院できない以上、在宅療養は多くの患者さん・ご家族にとって一度は考えなくてはならないものです。
中には、もともと在宅療養に向いている人がいます。
それは、ご本人が「自宅で過ごしたい」「入院をしたくない」と強く思っている方です。
このような方は、最期まで自宅で過ごしたいと思っていることも多く、いろいろと方針が立てやすかったりもします。
しかし、人数的には在宅療養には不安を感じている方の方が多いと思います。
「不安を抱えながら在宅療養を始めてみたが、意外となんとかなっている」というケースは、結構あります。
「案ずるより産むが易し」ということですね。
こればかりは、実際に在宅療養を行ってみなければわかりません。
また、ご家族の理解もあり、いくらか協力が得られるならば尚更良いです。
家族内で意見が割れている時はどうすればよいのか?
では、家族内で意見が分かれている時は、どうしたら良いのでしょうか?
意見の食い違いは、家族内で地道に話し合い解決策を模索していく以外にありませんが、それにはまず医師から聞いた病状を家族内で共有することが第一歩です。
病状が全然伝えられていないために妥当な判断ができない、ということはよく起こるものです。
これまでの通院はずっと本人一人で行っていた場合や、特定の家族だけが通院の付き添いを行ってきた場合、本人・家族で知っている情報に差があります。
家庭内で情報のばらつきを少なくすることは、話し合い何かを決める際に必要なことです。
情報を共有したら、その次に各々がどう思っているのか、どうしたいのか、どういうことなら協力できるのかなどを話し合っていきましょう。
話し合いの結果、方向性がまとまったら一番良いですが、まとまらない時にどうするのかは難しい問題です。
ある程度の覚悟は求められる
在宅療養を行うにあたっては、大切な心構えがあります。
それは、本人・家族ともにある種の「覚悟」「割り切る気持ち」を持つことです。
そうは言っても、もちろん簡単にできるものではありません。

勘違いしてほしくないのですが、覚悟できないことが悪いことだとは、私は思いません。覚悟できないところが、人間臭いところでもあります。
先ほど述べたように、緩和ケア病棟に入院できたとしても、体調が安定していたら一旦自宅に退院となります。
本当は緩和ケア病棟に入っていたいのに、入院期間が長くなり泣く泣く一旦退院しなければならないという方もいらっしゃると思います。
ここからは少し残酷な話にはなりますが、病気が進むと、ご本人・ご家族全員にとってすべて理想通りに事が進むことは、まずありません。
理想通りに進まず、イライラしたり気持ちが辛くなってしまうこともあると思います。
自分の思い描く「100点」が得られることはまずない、「80点なら十分合格」と思えたなら、少し気が楽になるかもしれません。

人間は欲深いので100点を望みたくなるんですけどね。
何かを選択したら何かが犠牲になってしまう、という状況はさまざま発生します。
枚挙にいとまが無いのですが、例えば
- 本人は化学療法を受けたくないのに、家族が強く希望しているから仕方なく化学療法を受ける
- 高齢の配偶者は本人に入院してほしいと思っているのに、本人は家にいたいから在宅療養を継続している
- 腸閉塞が治らない状況で、食べたいから食べてしまうと、その後に吐いてしまい辛い
といったことです。
その都度選択を迫られ、場合によっては決めかねている間に病状がどんどん進んでしまうこともあります。
在宅療養では病院のように注射薬をいろいろ使えたり、検査をすぐ行える環境にはありません。
できないことはできないと割り切れなければ、在宅療養は大変な時間になるかもしれません。
終末期に向き合う姿勢
病状が進み、終末期に近づくにつれて何かしらの不完全さと向き合うことを迫られます。
それは、ご本人にとっても、ご家族にとってもです。
がんの治療が難しくなること。
どんどん動けなくなっていくこと、食べられなくなっていくこと。
今までできていたことができなくなっていくこと。
理想的な環境が見つからないかもしれないこと。
そのような不完全さにどの程度向き合えるのかは、人によります。
真正面から向き合える人もいれば、向き合うと自分が壊れてしまうから向き合えない人もいます。
向き合えないことが、ダメなわけではありません。
ご本人・ご家族ともに無傷では通過できず、ある程度の傷を負うことは避けられません。
しかし、傷を負いながらも多くの人は生きていますし、生きていけることを、緩和ケアに携わる私たちは数多くの経験から知っています。
緩和ケア病棟と在宅緩和ケアのどちらを選んだとしても、正しい選択だったのかは、その時はわかりません。
時が経てば答えが見つかるかもしれませんし、いつまでも見つからないのかもしれません。
時間も労力もかけ、悩みながらみんなで一生懸命考えることそのものが大切なのです。
まとめ
今回の記事では、緩和ケア病棟で受ける緩和ケアと在宅緩和ケアのメリット・デメリット、さらには在宅療養や終末期における心構えなどについて解説しました。
それぞれの特徴を理解した上で、個々の状況に応じ選択していくことが大切です。
もし今まさに緩和ケア病棟か在宅緩和ケアかを迷っている方がおられるなら、必ず主治医や看護師、ケアマネジャーなどにもご相談ください。
この記事が少しでもより良い選択や、納得感の向上につながれば嬉しい限りです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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